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アリはなぜちゃんと働くのか [アリ]

突然、出てきたようなテーマだが、本人としては長い間胸に 

あったテーマで、ここらで本棚に埋もれていたアリ本も見て

しまったので考えてみたいと思った。

カレコレ20年の前か後か忘れたが、この本の前に手に入れた

アリの本があった。それから少ししてこの「アリはなぜ

ちゃんと働くのか」を見つけて購入した。 

読まないで、アリについての疑問はずっと抱いていた。  

まず、アリを特定しよう。 蟻は現在、生きている種類は30属 

12,000種以上というから、特定しないと、その特徴を 

言っても、知っているアリとは共通しないかもしれない。

場所はアメリカ、アリゾナ州のアリゾナ砂漠の蟻で、アカ 

シュウカクアリ、である。日本語で赤収穫蟻、だろう。

体調10㎜弱なので、日本で見かけるアリより大きい。 

兵隊アリと呼ばれるアリに近いかも。(ただし、兵隊アリ

はデカいだけで戦わない) 

アリゾナ砂漠では一番大きい蟻である。著者のデボラ・ 

ゴードン女史は大きいので見つけやすい。研究に適している、 

と合理的説明をしているが、あながち手抜きをしたいがための 

言い訳ではない。なにしろ、砂漠だ。暑いのである。なるべく 

労力を省くようにしないと、研究の前にバテてしまうのだろう。 


細かいことは省くので、生態やコロニー、その他のアリとの交渉、

巣との環境や関係について詳しく知りたい方は本を直接、読まれ

たい。(新潮OH!文庫)

人間の社会と比較すると、アリのコロニー(巣や巣山)がその 

対象なのだが、ここで面白いのはコロニーの不思議さがその 

比較でも現わされていることだ。コロニーは人間の社会という 

よりも人間の体に似ている。それは寿命のことをいう。 

人間は通常、生まれて死ぬまでが一生だ。再生はしない。 

これからの未来ではナノ技術からアンドロイドのメカ再生 

までは普通になるだろうが、今の時点ではそれは先の話に

なる。

コロニーは女王アリと翅のあるオスアリの群れで砂漠を飛び、 

それほど遠くなく、近くもない場所で交尾して、それから土の 

柔らかい場所を探して、掘ることから始まる。それは年に1度、

夏に雨が降った日の後の晴れた日であることが多い。地面が 

雨で濡れたあとで、掘りやすいからだろう、と。

で、それが意外に重要なことで、交尾したあとの女王アリは 

掘る場所を探して砂漠を走り回る。もう翅は落としている。 

その場所を探している間に、鳥や同種のアリや大きなアシナガ 

アリに襲われてしまう。命がけなのだ。 

女王アリは40㎝ほどに穴を掘ると、急いで入口を塞いで卵を 

生むことに専念する。というか、仕事はそれだけで、他には 

なにもしない。長生きのコロニーは15年~20年というから、 

その間卵を生み続けるわけだ。生殖能力を最大に生かす選択を 

したのだろう。女王という名前は意味がなく、権力も特権も 

なにもない。卵生産の専従機である。王でもないし、誰も 

コロニーを指揮しない。

だから、砂漠に降り立った時はオスが群がるが、オスは口が 

ない。なんと精子を植えるだけなのでなにも食べる必要が 

ない。1~2日で死んでしまうというから、その時は砂漠は 

オスのアリの死骸があちこちに見られるだろう。 

最初のコロニーは1,000くらいも作られる。ところが、そこから

は近隣の成長したコロニーとの食料調達の競争になる。大きい 

コロニーに挟まれた新コロニーはほぼ次の夏を迎えることはない。 

まったく生存競争である。1歳のコロニーは200くらいしか残らない。 

2歳まで生き延びると、近隣のコロニーが与える影響はぐっと小さく

なり、餓死させられることもなくなる。共存共栄らしい。

ただし、夏に生まれた新コロニーに対しては女王アリを掘り出して、

殺してしまうだろう。

ここで奇妙なのは、最初に言ったように「再生」しないことだ。 

女王アリが死んでしまっても、新しく生まれた女王アリはその 

コロニーを受け継ぐことも、次の女王になることもなく、そこの 

働きアリたちが死んでしまうと、コロニーは滅びる。つまり、 

コロニーは一世一代なのだ。人間で言えば、生まれたら死ぬ、 

という肉体と一緒なのだ。 生まれた処女女王アリは飛んで 

行ってしまう。まるで子供が他で生きる場所を見つけるように。 

僕らは人間の社会を基本に考えるから、奇妙に思うが、自然界 

では奇妙なのは人間の社会のほうかもしれない。王や大統領など 

の指導者がいてその下ではそれぞれが役割を分担、それも職業

という分野を選択するというのは。

人間の社会は合理的ではなく、アリのほうが命令系統もなく、

自動的に働くというのはよほど効率がいいのではないか、と。 

そう考えればそうだが、アリのコロニ―には平均10,000匹の 

働きアリがいる。しかし、巣から出て、食料を探す班と探した

食料を運搬する食料収集アリがいて、足しても3,000匹である。 

食料の移動や女王アリの世話や卵の世話という仕事はあるが、

残り全部がコロニー内で働いているとは考えにくい。恐らく、 

なにもしないアリのほうが多いのだ。 

数千匹のアリが必要か?これは新参の僕らにはわからない。 

遺伝子の分析でわかったのは、アリはジュラ紀か白亜紀あたり

のミツバチの祖先から分岐したらしい。1億年前、その前後で

ある。 人類はアフリカで生まれた500万年前の猿人から 

とされている。知恵がついたのは、紀元前三千年前(文字 

の誕生)、現在までの5,000年から6,000年が歴史時代と 

されている。アリのほうが99,995,000年も長い時代を 

過ごしている。予備のアリが何千匹いようが、僕らが 

口を挟むことではない。 気持ちとしては、だが、口を 

挟めるのが虫・動物と人間の違いでもある。 


そこで思い出すのが僕らのDNA配列である。ヒトゲノム

は人一人30億の塩基配列でできているが、その遺伝子 

情報はたったの2%。98%は非コードでゴミ扱いされて 

いたこともあったが、今は新たな研究がされている。 

ヒトとチンパンジーとではその情報の違いが200くらい 

しかないという。30億分の200とすると、人間はほぼ 

チンパンジーである、その情報では。なので、同じ 

人間では99,9%が同じ遺伝子情報を持っている。僕らは 

見た目も、心もずいぶん異なっていると、違いを強調 

するかのように感じているが、まだ全開放された自然で

いうと、30億分の1ほどの知恵しかないのかもしれない。

それは不確かにせよ、体は29億4000万もの予備DNAを 

用意しているのかもしれない。アリより凄くない? 


命令系統がなくても合理的に働くアリはコロニーを 

生きる単位にしている、と言える。それが奇妙に見える 

人間という言葉を発明した動物は、そこになにを見出し 

たから、そこで社会の性格が決まったのか。明確に 

わかるのは、昆虫や植物、動物の世界では地球という 

ものはない。人間だけが地球を考え出し、自と他を感覚 

で分けるのではなく、自分から見た他のもの、他のもの 

から見た自分を脳内に描き出す。この描き出す抽象性は 

自然のものかもしれないが、生物感がないように感じる。 

すると自分では生きられない、生物ではない寄生して 

初めて生きることができる無生物が想像される。その 

第1候補はやはりウィルスだと思われる。極端に結論を

急ぐなら、僕ら人類はウィルスと共存しながら、ついに

はウィルスにより矯正された歴史を育んでいるのかも

しれない。 

ミトコンドリアは全細胞内にいる。平均で細胞1個に 

300~400いて、エネルギーのやり取りをほぼ行っている。 

その起源は20億年以上前らしく、詳しいことはわかって 

いない。だから、人間がどの猿人か、その前の猿か、と 

いう段階でミトコンドリアを取り入れたかは、議論の 

しようもない。海に吐き捨てた唾を1日経ってから、取り 

出す方がやさしい。ミトコンドリアは古菌類から派生 

したらしく、もちろん、人間由来ではない。 

では知を生んだのは、ウィルスか?それはまだ発見されて 

いない。アリにしてもどんな生物にしても、ひょんなこと 

からそういう大発見がされるのが、自然のなりゆき、と 

いうものだ。

アリはなぜちゃんと働くか、読んで共感して、感心する 

ばかりでなく、自己の自然経験に照らして、別な観点 

からの発見は見込めないだろうか?  

 くり返してばかりだが、答えは目の前にある。それは 

間違いない。君がよい科学者になるのなら、知からの 

観察だけではなく、心からの観想も必要とする、と 

あの明治の人も言っていた。僕もそう思うよ。


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