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何もない戦争と明るい煉獄の夢 [夢]

目覚めていたが、意識を保たないと

また眠りに落ちそうな、寝床の中

だった。雨の音も、車の水を切る

音も聞こえていた。

が、ひとつ現実とは思えない音色

も聞こえていた。豆腐屋のラッパ

である。「トーフィー」と鳴る

昔の独特な音色だった。なつかしい

よりも、この近辺でまず聞いたこと

がない。幻聴かと疑いたくなったが、

意識ははっきりしている。ただ夢を

思い出せるくらいには、あいまいな

睡眠へ移行できる状態ではあった。

3回聴いて、幻聴ではないと思ったが、

遠ざかったらしく、ラッパが遠く、

小さくなった時に、幻聴と区別でき

ない朦朧な音に聞こえた。

またよく聞こえた。それから、2回

くらいで聞こえなくなった。が、

この雨の中、豆腐を出張で売りに

来るだろうか。あまり考えられない。

いつも回ってきているなら、有り

かもしれないが、聞いたとしても

忘れているのだろうが、そんな前だ

ったら、1度か2度の記憶だろう。


そのラッパを聞く前から、起きる前

に見ていた夢を思い出していた。


::煉獄編

始めの記憶はあいまいで、日本に

いた。親戚の叔父さんと誰かと逃げ

て、避難しようとしていた。それく

らいしかわからない。駅も避難する

人でごったがえしていた。この場面

ではその理由がわからなかった。

駅の切符はもう売れていて、駅に

入れない人が遠巻きにしていた。

駅の入り口には警察官の帽子の

ようなものを被った駅長がいた。

僕が群衆のより前に出ようとして

いると、僕を見つけた。

駅長の顔が大写しになった。TV

や映画の映像の影響だろう、現実

にそんな大きい顔を見ることは

ない。何が特別なのか、切符を

売ってくれるのかも話さず、ただ

乗る駅とその終着の駅だろう、

その駅名を告げた。それが漢字で

見えた。二つとも覚えていないが、

終着の駅名は見たことも聴いた

こともない。

そこから乗り換えて、知っている

駅まで行かなくてはならない、と

「そこからどう行くのか」と息せきっ

て尋ねた。

次はもうまた避難の場面で、はっきり

戦争の状況があった。

誰か若いのが、(製材された平らな)

木材の上にいれば安全だ、と皆を

リードしていた。そこにうすい皮

のような木材で、半端なのが重なっ

ている処に、これも木材でできた

通路が開いていて、地下へ通じて

いた。(そこは製材所の地下木材

倉庫のような処)僕らはそこへ逃げ

込み、薪が重なったような、半端な

板の重なった上にそれぞれ坐った。

木材の香りの成分を避けるような

化学兵器の爆弾なのだろうか、と

考えた。

そこは地下であるにも関わらず、

すぐ近くに大きな出口があり、それ

は外のように見えた。やがて、避難

していた人々がそこからぞろぞろ

出て行くようだった。どうやら

爆撃音のひとつもなく、空襲は過ぎ

たらしい。

そこはたぶん、韓国だった。僕は

たったひとりになり、どこに行けば

いいのか、どこで過ごせばいいのか、

孤独からひどい寂しさを感じた。

出口の向かいの建物の階下駐車場

のような空間に寝ている人がいて、

僕を見るのに上半身起き上がった。

白い顔の顎髭のある中年男性で、

声をかけてくれて、なにかつぶや

いていた。その男の周りにも人が

数人いて、避難していたのだろう。

僕はその男の近くまで歩いて、その

言葉を聞くと、独逸語だった。それ

で聞き取れないのがわかった。

僕はカタコトの英語で独逸語はでき

ないと伝えた。それからまた男は

英語のカタコトも交えて、独逸語で

何か話したが、意味は分からなかっ

たが、愛情にあふれる感じが伝わって、

僕は彼を抱きしめ、彼も僕を抱き、

抱き合った。

すると、耳元で「ウチニ来ルトイイ」

と日本語が聴こえて、僕は涙ぐんだ。

しかし、近くの人がその様子を見てか、

話しかけてきた。中年の夫婦だろう、

その奥さんのほうだった。そして、

彼らもヨーロッパ系だった。ここに

は欧州人が集まっていた。

僕は彼から体を離そうとすると、彼の

頭はサトイモの煮っころがしのような

ぬめりのある、ぼんやりした顔に

なっていた。僕との間に透明な粘液の

糸が一本引いていた。その瞬間に、彼

の愛情がホモセクシャルであるのを

感じ取って、彼の家で少し生活でき

ればよかったのに、それはできない

と思った。僕はそれが軽めに言って

も好きではなかった。

おばさんの説明では山形の飛行場

にここの近くから出る便がまだある

ということだった。(山形のような

地方の飛行場の他は全滅したの

だろう、爆撃で)

日本はひどいことになっている、

帰らなければ、と思った。

おばさんはこれでと言って、お盆

くらいの四角いブリキ板を2枚見せ

て、私(たち)は予約してきた、と

告げた。その個所には「平江」と

いう苗字ともうひとつ、隣に僕の

苗字が書かれていた。僕は僕も

予約したと言ったが、すぐに言い

直して、僕と同じ名前の人が予約

しているという意味ですがね、と。

― これで 終わり。



あいまいな目覚めの中で、なにか

覚えのある雰囲気の夢だという

ことを思った。それは暗いもので

はない、明るい地獄の貧民洞窟の

夢と共通していた。が、地獄ほど

はっきりしたものではないので、

煉獄としたほうがいいだろうと

思った。

男と抱き合うとか、戦争のイメージ

だけとはいえ、直接な戦禍の場所に

いる夢はみたことがなかった。ので、

強く印象に残り、書き残すことは

決定していた。起きてすぐ書くのは

夢のことだけで、これは2回目だ

ろうか、まだ1時間半くらいだが、

体のモヤッとした感じが残っている。


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