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桜 桜 桜よ [日本人]

桜、 桜と 


今でも 思い出せそうもない 


なにか わかり切ったと思っていた 


それが 走ってゆく 


君には  それが  見えるか 


君は  それを  愛するか 


それは なびて  喪失するもの 


それは わりと  打ち解け合うもの 


それは 妙に  皺を 寄せあうもの 



あなたは 立っていた 


あなたは 歩いていた 


なんでもなかった  あなた 


それが 的が矢で 割られたように 


変ってしまう 


君が いなくなると 思うと 


それが わかる 


君と 逢えないと 思うと 


それが わかってしまう 


君が 生きていたこと 


立っていたこと 


歩いていたこと  


微笑んで いたこと 


僕が  君を  愛していたこと 



街は 雑踏だった 


饐(す)えた匂いも  していた 


汚らしい ぬかるみも  少しは  


あった 


遠くへ行って  


東京へ 還って来ると 


夜の 電車の中で 


帰って来たよ、 と 窓越しに 


街の夜景に  言えた 


やはり この街が  好きだ 


東京で生まれ  東京で 育った 


それが 身に染みていた 


なつかしいものに 熟成して 


味噌のように  匂っていた 



君は 北海道からきて 


東京は 臭い、臭いと  言っていた 


ほんとに そうだ  


でも 暮らすと  それが


慣れてしまって 気にもしない 


人間の街って 


そういうもんじゃない? 


僕は 生まれた場所へ 


時間の長さは  還暦にもなった  


その 生まれた場所に 


行ってみたよ  


すぐそばに  靖国神社が あった 


ほんとうに  ここ? 


英霊にも  なにも感慨が 


なかったにも かかわらず 


遠くの 社務所の 裏のほうで 


僕を 呼ぶ声が 


そう 聞いた気がした  


ここが  ほんとに 


生まれた 場所? 


僕は 日本に なった 


妄想 かのように




君と 君らは 消えた、 


また  消えてゆく 


君の 消息を  聞いていた時には 


なんでもなかった 


生きているのだと 思うだけ 


でも 


君が 消えゆく運命だと 


わかった時 


君の時と  僕の時が 


鐘を 打ち始めた 


カン、 カン、  カーンッ と 


あたりは  砂の広場のように 


静まり返った 


今のは  と思うと  


カン、 カン、  カーンッ と 


今度は  胸を 打った 


・・・・・・・


なぜ   涙が?


・・・・・・・


なぜ   悲しみが?



桜、  桜、  と 


君は  歌いたもう 


この  桜の  下で 


君は  消えてしまった  


とうとう  消えてしまった  


消えてしまったん だね  


この時が  ・・・ 


来るとは  ・・・


知りながら ・・・


生きていた君を  知りながら 


こうしてみると  


ああ


桜、  桜、  桜よ 


君と  


生きようとして  生きるよ 


生きていた君 ではなく  


消えてしまってみて  


初めて  


君と  生きようとしている 


生きようとして  生きる 


生きていた君 がいたのに  


消えてしまってみて  


初めて  


君と  生きようとしている 


僕の身と  重ねあわせ 


生きようとして  生きる 


ただ  生きているだけじゃなく  


どうして  今まで  


生きようと しなかったのか


悔やむ  


悔やまれる 


そう思わないのは  


まだまだ 


生きている  それだけだからだ 



生きようとして  生きる 


砲弾が  落ちてきてから  


そう思おうとしている 


僕らは  ただ  生きている 


関係を 恐れるのは  


生きていないこと なのに 


眼は  まだ  覚めない 



ああ


桜、  桜、  桜よ 


君と  


生きようとして  生きるよ 


生きていた君 ではなく  


消えてしまってみて  


初めて  


君と  生きようとしている 


生きようとして  生きる 


生きていた君 がいたのに  


消えてしまってみて  


初めて  


君と  生きようとしている 


僕の身と  重ねあわせ 


生きようとして  生きる 



君が  まだ 生きているうちに 


角の  酒屋に  買いに行って 


つまみは  何だったか


この世に  生まれた  


祝杯を  挙げん  



すまない 


ありがとう 


なぜか  すまない  


なんでか  ありがとう



何年も  すまない 


何年も  ありがとう



祝杯を  挙げん!


晴れた この冬の 道を 


二人


歩きながら



君と 生まれて  よかった


足の下に  イチョウの 葉が







風の 流れ : : ::

< 差し足に 
       ころがる タンク
    今様の  
         ブリキ玩具 > 


  余韻 : : :  ::




解題::

 英霊も

 友人も 

 恋人も 

 僕も 

 過去の人も 

 皆、日本人 

 桜の名の下に 

 僕らは 日本人。
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