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面影はそんなようにならない

どう言っていいのか わからないけれど

ズレるんだね  僕らの 人生は と

いっていいのかどうか

よく わからないけれど

僕が 勧めた曲を 学芸会みたいと 見下していた

君が

いつのまにか  それのアルバムを  聴いていたこともあった

君のことと  僕のことは

ズレたまま 終わったのだろうか

僕には 好きになる対象が 必要とか

それだけだったりして

こうして 愛を求めて  ひとりになる という

それが たいせつなことだった のだろうか

今 もう過ぎたというには  あまりに十分な

時間が 過ぎ去って  

この今

僕らが 若いまま 出会ったのなら

僕らは 違っていたのだろうか

僕らは ズレただけ だったのだろうか


君に そっくりな娘(こ)に 会ったよ

それは それは とても  おとぎ話

どんな セッティングがあったのか

それは それは  とても シュールな時間

そう感じたよ

雪が積もった 陽射しの明るいバス停で

スキーの帰りのバスを待っていた

昼食で 女の子のグループと 話したかったが

いなかった  話す相手なしで このまま

帰る - そう思っていた

小型のバンが君を 降ろして

君の影が 僕の左わきに

僕は 後ろを向いていたのでわからなかったけれど

強烈に この影が、つまり君が

今日話す相手なのだ と感じた

思ったなんてものじゃない  強烈に 感じた

振り返ると  すべてが わかった

僕と一緒だった頃の  君がそこにいた

君とは  精神的にケリが ついていた

君は 間違えた選択で 若き誤りだったと

それは きれいな過去になった

けれども

もう一度 その頃の君に 出会うというのは

ショックだった

素晴らしさを  感じた

ありえないことだったから!

顔は まあ似ていた でも

その雰囲気 背格好は 君だった

僕は 足慣らしに 一人でスキーに

君は 学校の先生で  3割の障害者がいて

その子たちのために  スキー場の下見に

帰りに ただ一緒のバスになった という偶然だ


君は 君だった

はっきり  強烈に わかったのは

二度とない瞬間だということだった

僕は 一人で来た理由を 話した

君も

舞台に上がった

これが 人生の舞台に上がる ということだった

台本なんかない

バスを降りれば  もう舞台は来ない

わかりきっていた

考える暇が なかった

バスで 隣に座って  図々しく 話し続けた

バカな話でも 我慢して

君は 知らないだろうけれど

君は 舞台のヒロインなんだ

物静かで ちょっと皮肉気味で

まったく 君だった

空気が 時間が  その場のなにかが

締めつけるほどに 引きしまっていた

あとで時計を見て 20分間だと知ったけれど

時間はなく  バスの流す風景の

ちぎれた印象が あるだけ

君が(信じられない!) そこにいて

となりに 僕がいた!

奇跡というのは  言葉に過ぎないだろう

それは もう なにとも交換ができない

特別な瞬間だと  すぐに終わってしまう

奇跡の瞬間だと  話しながら

忘れられない  こんなことは  信じられない と。

僕の 人生に  これが  ありえるとは と。

今 思えば こういうのは

とても緊張する しあわせ だ

人生が 舞台だと  これほど意識できたことは

なかった  なかったよ

そう

これは もう まちがいなく ドラマだった

僕の心を すべて ひっくり返す 瞬間だった


バスを降りて 君は向こうへ  僕は駅のほうへ

君は一度も 振り返らず

そうだろう  呼び止められないように

用心しただろうから

僕は  なにか連絡先を 聞かなくていいのか

それが 正しいのかどうか

これでいいのかどうかを  心でくり返していた

でも

彼女は  君じゃない

君の 幻だ  現実の役者だ

それ以上  なにを 期待しよう?

それよりも

これは あまりに興奮を もたらせて

まだ  ありえたこととして

現実と 認めるには

気持ちが  揺れ動いていた

終わっていた  確かに

それでも このことが  どれほど

素晴らしいことだったか!

間違えても 君と出会ったことは

間違いではなかった!

人生に 間違いは  なかった

たぶん

そうなのだ

その舞台に立った 実感が

そう教えていた

実感が

そう教えていた


その時は わからなかったが

面影なんて  突き抜けていた

実感が  出会いの役を こなしたことが

人生の なにかを

鷲づかみに していた

駅の前で  僕は まだ わからずに

佇んでいた
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