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むなしさを求めて

精神の実況中継をして、自分を再確認することは往々にして心理にして疲れる。

心理は休むが、体は僕らが心理だけではない、精神だけではないと

教えてくれる。体内のなにがそう教えるのかまでは知らないが、体の”気”

にも休ませろ、と言っているようだ。(心のやる気は体の筋肉の量に比例する)

ベタになるが、「むなしさを求め」ろ、と言うのだ。自然に体が都会から離れ

ようとする。当てのある場所はひとつしかない。旅行に出るような余裕がないならば

川に出るのだ。そこにある広い河原に風に吹かれて、ただ歩くのだ。ゴンタ石に

足を取られながら。

地球に広がる砂漠や、山岳の列なりしか見えないそういう場所の代わり、なのだ。

砂漠のほうが生気がなく、歩くにはふさわしい。何の器具も要らないのならば、海の

底も光が届くぐらいで、その次にふさわしい候補だろう。

心が求めるというよりも、体の要求を心が代弁している。微妙な違いだが、食欲が

体が求めているのか、グルメで眼が求めているのか、そういう違いと変わりない。



相模川は車で10分だ。

河原というのは自然の一部で、軽く見てはいけない。小さな遭難はあとを絶たない

から。バラの藪が河原に低く広がっていて、そこをぐるりと迂回するよりも、突っ切って

行った方が早く河原から出られる。そうなるとすぐ試したくなる性分だ。

土手の脇に小さな細い流れがあったが、大したことはないように見えた。

もう昔のことだが、まだ知らなかったので、軽く見て、藪に入り始めた。トゲが曲者で

引っかかると無事ですまない。ジグザグにあちこち進みながら、向こうに着いたが、

時間を短縮するつもりが、あまりそうはならなかった。

しかも、細い流れを飛び越えなければならなかった。が、着地は坂になっているし、

遠目で見たよりも広く、坂ですべって、流れに落ちそうだった。いくらでもシュミレイション

してみたが、成功率は低かった。見回してもそこまでは、やはりトゲが邪魔をしていた。

戻るしかなかった、無駄足だった。

よく藪を見渡したが、反対側から見ても、楽なルートはなさそうだった。なれば、山の

鉄則にもどって、来た経路を同じように戻るのが正解だった。そうして僕は、この小さな

遭難のために30分以上を費やしてしまったのだ。

河原にむなしさはなかった。それに川の水量が少なく、流れが細くなり、その分河原が

広がっていた。僕の心は元気だった。前に釣りもした溜め池やボートも停泊していた流れも

なくなってしまっていた。それもまるで気にならなかった。少し、気持よかった。

軽い風が吹いていた。冬の陽射しがあった。

そこに流され、揺れるように歩く僕。

それだけがすべてで、それしかなかった。人は見かけなかった。

わずかに残った水たまりにテトラポットがあり、それを伝って土手へと引き上げた。

土手は藪で、枯れていたので見通しは良かったが、細い竹藪などがあり、意外に

行く手で抵抗された。パズルを解くような思考で、抜ける経路を見つけながら、

楽しんだ。土手の上の道路に出ると、サンダルとそこからはみだした靴下に

雑草の動物の毛にくっつく種子がいくつも付着していた。こんなものも、なつかし

かったが。


むなしさはなく、僕の世界は平凡で、おだやかだった。

平穏な息吹が好まれた。

無感慨、そのもの。

河原の石を拾った。手のひら大で恐竜の卵のように、長楕円でいい形だ。

黒いごまのようなアクセント、雲母だろうか、あちこちキラキラ、小刻みに輝く。

重みがあって、持って帰るのか、捨てて帰るのか、考えている。

カメラは充電しなければならず、夕方も近いので日が落ちてしまうので、諦め。

と言って、川と河原のほかになにもない。

さあ、気持ちいいくらい、報告するなにもない。


カラスが2,3羽。川の水打ち際に。

あとは冬の空気だろう。

冬の陽射しだろう。

そこで、石を捨てた。部屋に持ってゆくと、石は計らずも存在感をもってしまう。

飾る場所もなかった。

すっかり意気込みがない。肩の力が抜けた、と言うか。

そこでなにかを 問う という気もなく。

遠くの下流で、逆光になっている246号線の橋がかかって。  

川面に日光が反射しはじめ、

ここで1万人とも、3万人とも妄想して

夜な夜な彼らに 来た道を帰るように説得したとは。

もう、忘れていた。たしか、アウシュビッツで死んだ人たちだ

ヒトラーの、ヒトラーに関する本など集めていた頃、

微熱が1週間も続いて、これではまいってしまうと

そういう妄想をつくって、昔の呪術の方法で 治癒しようとしたのだ。- 三日三晩

向こう岸では、地球の自転を一瞬感じて

テトラから落ちそうになった。

心理だとは言っても、心で起きたことは

体は実行するから、笑ってはすまない。

まだあったな ・・・。

まだまだ 、・・まだまだ・・  それこそ

うんざりするほど。1日のことさえ 、書き切れない。

膨大なものごとが、群がったウンカのように邪魔をするだろうが、

それも消えてしまうものなのだろう。

僕らの物語も。

この呼吸のように。

ため息とともに。

涙と ともに。

笑い とともに。

その ささやかさ とともに。


デ デ ダ ディ デ  デ

デ デ ダ ディ デ  デ

Nn  Nn  Nn ~ nn


僕らは そこに  傍らに  なにを置くのだろうか

何も 語らない 思い出だろうか


デ デ ダ ディ デ  デ

デ デ ダ ディ デ  デ

Nn  Nn  Nn ~ nn  


傍らに なにを 置くのだろうか

変わらない想い だろうか  



デ デ ダ ディ デ  デ

デ デ ダ ディ デ  デ

Nn Nn Nn ~ nn


デ デ ダ ディ デ  デ

デ デ ダ ディ デ  デ

Nn Nn Nn ~ nn
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